学び
2021.01.10
大学野球、ラグビー、サッカーなどライバル校同士の対抗戦はそれぞれの学校の在校生や卒業生にとどまらず、多くの人から注目を集めることがあります。中でも早慶戦は例ねん白熱した戦いになり、話題を集めます。
そもそも早慶とは一体何か、早慶の偏差値や早慶と他の大学群のレベル差、就職の状況などをまとめました。
早慶は早稲田大学と慶應義塾大学の頭文字をとったもので、その歴史は大学が正式に設置された1920年よりも前につけられたと言われています。ここでは早慶について解説します。
早慶は早稲田大学の早、慶應義塾大学の慶をつなげて作られたものです。慶應義塾大学側が慶早戦と称することがありますが、リズム的に言いやすい早慶が一般的に用いられています。早慶は1920年に施行された大学令によって日本で初めて誕生した私立大学ですが、その前から活動を行っており、改めて大学として整備されていきます。
早稲田大学は東京専門学校を前身にしており、イギリス流政治学を重点にし教育が行われてきました。当時の東京帝国大学はドイツ流法学が中心となっていたため。これに対抗するべくイギリス流れが採用されます。そして政治と経済を融合させた学問を確立した、現在も政治経済学部が早稲田のメイン学部として機能し続けています。
慶應義塾大学は蘭学塾をルーツにし、福沢諭吉の手によって作られました。福沢諭吉も属していた中津藩の屋敷で杉田玄白の解体新書につながるターヘル・アナトミアの解読が行われたこともあり、医学や研究に力を入れていました。看護や医学部など医学系の学部があるのもその名残と言えるでしょう。
早慶の歴史は大学野球の歴史と等しく、以前から野球を行ってきた慶應に早稲田が挑戦状を送り付けたところから始まります。ここで早稲田が善戦し、互いに認め合ったことで1904年から早慶戦がスタート。以降、慶應の学生が大隈重信の家の前で、早稲田の学生が福沢諭吉の家の前で万歳三唱をするなど応援は過熱、結果的に双方は犬猿の関係になり、一時は絶縁関係になってしまいます。
早慶戦が復活したのは当時の東京帝国大学、現在の東大が大学野球のリーグ戦に参加を表明し、東京六大学野球をスタートすることになった1925年で、実に19年もの空白を経て再会に至ります。過去の因縁も相まって早慶戦は全国的な人気コンテンツとなり、早慶の括りは日本中誰しもが知る存在に。そして野球やラグビー、サッカーなど様々な場面で早慶戦は話題となり、永遠のライバル関係が築かれていったのです。
伝統があり、それぞれに異なるルーツがある早慶。ここでは早慶の偏差値を学部ごとに解説します。
早慶の偏差値ですが、早稲田大学は62.5~70.0、慶應義塾大学は60.0~72.5です。早稲田の看板学部である政治経済学部や商学部などで偏差値70を記録し、慶應義塾では湘南藤沢キャンパスにある総合政策学部と環境情報学部が偏差値72.5を記録しています。
政治経済学部は東京専門学校時代に政治経済学科が設置されたのが最初です。その後学科の統廃合もあり、1973年には今の姿になります。早稲田を代表する学部であり、募集定員を減らして数学を必修とするなど日本最上位の文系学部としての誇りを守り続けています。偏差値は67.5~70.0です。
文学部は政治経済学部と同様、東京専門学校時代に作られました。長らく昼間の第一文学部、夜間の第二文学部に分けられ、第二文学部に著名人が入って話題になったことも。2007年にこの2つの学部が再編され、新たな文学部が誕生。18ものコースが存在し、多様性を感じさせます。偏差値は67.5~70.0です。
教育学部のルーツは1903年に設置された早稲田大学高等師範部です。卒業すれば自動的に教員免許が与えられ、旧制中等教育学校で卒業生は教鞭を執っていました。1949年に私立学校法が成立したことで、教育学部を創設。この時、私立大学初の教育学部が誕生しました。偏差値は62.5~67.5です。
商学部は1904年に設置され、明治大学と同じく日本の私立大学最古の商学部となっています。意外にも多くの政治家、知事を輩出し、政治経済学部に負けず劣らずの実績を残します。また多くの財界人を商学部から送り出すなど、政財界に影響を与える学部と言えるでしょう。偏差値は65.0~70.0です。
理工学部の前身は東京専門学校の開校時に設置された理学科です。1920年に理工学部となると直後にアインシュタインが来訪。日本初のテレビの実験放送に成功するなど様々な実績を残します。2007年に理工学部から3つの学部に再編、そのうちの1つが基幹理工学部で、数学や情報通信、情報理工学などの学科があります。偏差値は62.5~65.0です。
創造理工学部は、建築や環境資源工学、経営システム工学などがある学部です。こちらも2007年に独立し、独自の発展を続けます。偏差値は62.5~65.0で、基幹理工学部と同じです。
先進理工学部も2007年に理工学部の再編で誕生した学部で、こちらは物理や化学などを取り扱います。偏差値は65.0~67.5で理工系3学部の中で一番上です。
社会科学部は当時の代に政治経済学部、第二法学部、第二商学部を統合させて作った学部です。夜間学部を1つにまとめたことで社会人でも受けやすく、講義科目も多いため、多様性の象徴にもなっています。国際色が豊かことも手伝ってか人気が非常に高く、入試倍率が高い状況が続きます。偏差値は67.5です。
人間科学部は1987年に設置された学部です。文理融合タイプの学部であり、最初は文系路線を歩んでいても理系路線を歩みたければ、途中で転科の試験を受ければ切り替えることができます。スポーツ科学科があったため、多くのスポーツ選手が在籍していましたがのちに独立しています。偏差値は62.5~67.5です。
スポーツ科学部は2003年に設置された学部で、人間科学部から独立しています。スポーツに関する学部で、スポーツコーチング、ビジネスなどもある一方、トレーナーなどを目指すコースもあり、スポーツに関して幅広く取り揃えている学部です。偏差値ですが、独自問題の試験がないため、河合塾で偏差値は出されていません。共通テスト利用入試の得点率ボーダーは84%となっています。
国際教養学部は2004年に設置された学部で、多くの帰国子女を集める学部でもあります。英語教育に熱心に取り組み、英語での授業を展開するなど、実践的な英語を学べるのが特徴です。偏差値は70.0です。
文化構想学部は2007年に設置された学部で、第一文学部や第二文学部の再編によって誕生しました。文学部は本来のスタイルで行い、文化構想学部は人文学や文化学を横断的に学んでいくことができるほか、第二文学部の性質を加味し、夜間にも授業が受けられるようになっています。偏差値は67.5~70.0です。
文学部は大学として整備される前、1890年から存在します。1度は文学科は廃止されたものの、数年後に復活。1920年の大学令では4つある学部の1つとして機能し、学科の解説や統合を重ね、現在は人文学科1つに絞られました。偏差値は65.0です。
経済学部は1890年に設置された理財部が前身となっており、日本初の経済学部です。大学令で理財科から経済学部にバージョンアップしました。現在は経済学科のみですが、過去には商学科があり、これが商学部としてひとり立ちします。偏差値は67.5です。
法学部は1890年に設置されました法律科がルーツになっています。しばらくして政治科が追加され、1920年に法律科と政治科がセットになり、法学部が誕生しました。偏差値は67.5です。
商学部は1890年に設置された理財科に属しており、1920年経済学部の中の1つの学科として存続します。商学部への独立を果たしたのは1957年で、経営や会計、商業の領域を学びます。偏差値は65.0~67.5です。
慶應義塾のベースである医学部は、1873年に医学所が解説されたところから始まります。一度は廃止され、数十年の時を流れ復活。この時医学部設置に尽力したのが北里柴三郎で、初代医学部学長に就任。その後関東大震災で救護活動にあたるなど、幅広く展開し、現在に至ります。偏差値は72.5です。
理工学部の前身は当時の王子製紙社長藤原銀次郎が立ち上げた藤原工業大学です。日本初の工業系大学でしたが、当初から慶應義塾大学への寄付を前提に設立。その後併合され、1944年に工学部、1981年に理工学部となります。工学系の学科3つからスタートし、定期的に学科を追加。現在では11学科まで増えました。偏差値は65.0です。
総合政策学部は、神奈川県藤沢市にある湘南藤沢キャンパスにある学部です。設置は1990年と歴史は浅く、幅広い人材を育てることが目的であり、多種多様な著名人を出しているのも特徴です。偏差値は72.5です。
環境情報学部は総合政策学部と同じく1990年に設置された学部です。こちらも総合政策学部と理念はほぼ同じですが、こちらは理系の要素が色濃くなっています。ただどちらも明確に理系文系での区別はしていません。偏差値は72.5です。
看護医療学部は医学部内にあった医学科附属看護婦養成所がルーツです。その後慶應義塾看護短期大学にバージョンアップし、2001年に看護医療学部に発展します。最初の2年は湘南藤沢キャンパスで学び、残り2年で慶應大学病院などで看護教育を受けます。看護師の国家試験の資格を得られるほか、保健師や助産師の受験資格も得られます。偏差値は60.0です。
薬学部は共立薬科大学と合併して誕生した学部で、2008年からスタートしました。共立薬科大学の創設者も慶應の出身で、それが縁となり、慶應との合併にこぎつけます。偏差値は62.5~65.0です。
早慶の難易度やレベルはどの程度のものなのか、様々なファクターから解説します。
偏差値は先ほどもご紹介した通り、法学部や商学部など全国的にある学部を中心にかなり高い偏差値となっている一方、今回取り上げた偏差値は河合塾の偏差値で、合格可能性50%時の数字です。つまり、確実に合格を目指すにはこれ以上の偏差値を残す必要があり、いわば最低限の偏差値となります。偏差値70を最低限確保しないといけないとすれば、その難易度は相当なものであることは明らかです。
倍率だけを見ると、実は早慶は減少傾向にあります。これは大学の定員厳格化の影響が大きく、合格者を多く出して入学者が定員を大きく上回ることを避ける狙いがあり、激戦になりやすいと言われています。激戦となれば倍率は上がり、偏差値もさらに必要となる、これでは分が悪いということで早慶を回避し、MARCHに逃げるケースも増えている状況です。それだけ本気で受けに来る受験生に絞られるため、早慶に限っては倍率はさほど関係ないでしょう。
早慶という大学群は私大の最高峰であるため、最難関であることは言うまでもありません。いわば私大ピラミッドの頂点に早慶が君臨します。この頂に立つにはそれ相応の勉強をクリアしないと大変で、大学群だけでとても大変な挑戦に挑むことを認識するべきでしょう。
入試問題はマニアックな知識ばかりが出されるのではなく、実は基礎的な知識があればなんとか解けるものが多いです。しかし、ストレートに出題されることは少なく、文章を読み解き、推理しながら解いていく必要があります。基礎的な知識をつけることは当然ですが、複雑な問題を何度も解いて解き方をつかんでいくことが求められます。だからこそ、基礎知識は早々に身をつけて、あとは問題を多く解き、解説を読み込んで解き方を学ぶことが必要なのです。
早慶の場合、偏差値65や67.5、70が目立っています。偏差値70の場合、上位2パーセントまでなので、1学年100人の学校であれば偏差値70をクリアするのは2人だけということになります。例え偏差値65だったとしても上位7パーセントに入れるかどうかなので、かなり狭き門であることに代わりはありません。早慶は上位2パーセントから7パーセントのところにいる人でないと入れないというわけです。
早慶はどちらが上なのか。最高の偏差値だけで見れば慶應義塾大学の72.5が上なので慶應ということになりますが、早稲田はどの学部も偏差値が同じようなところにいて、しかも偏差値は高位安定です。こうした点を考えると早慶に序列をつけるのは極めて難しく、がっぷり四つに対等に戦える存在と見るべきです。あとは就職面などで見るべきでしょうが、こちらも甲乙つけがたい状況なので、はっきりとした差はつけにくいです。
早慶とその他の大学群ではどれくらいのレベル差があるのか、詳しく解説します。
早慶の偏差値はだいたい60.0~72.5に凝縮されていますが、MARCHは50.0~67.5と非常に幅広いのが実情です。偏差値60.0あたりがMARCHの偏差値でよく出やすい部分で、早慶は偏差値67.5あたりが目立ちます。両者の差は5ポイント、もしくは7.5ポイントぐらい離れており、それなりのレベル差が見られます。
MARCHを現役合格できるレベルであれば、わざわざ浪人してまで早慶に入るべきかどうかは悩みどころです。MARCHでもそれなりの就職先を見つけられるため、1年間のロスを覚悟して賭けに出るかどうかも重要になります。偏差値だけを見れば早慶で当然ですが、手堅くMARCHを選んだとしても判断として間違いだったと明確には言えません。
上智大学の偏差値は57.5~70.0で、わずかに早慶を下回る程度です。偏差値に換算すれば2.5ポイント程度です。法学部や経済学部など早慶の看板学部になっているところで互角を演じており、偏差値ほどレベル差はないと見るべきでしょう。
早慶も上智もレベルはほぼ同じなので、どちらに通ったとしても学歴として認められます。しかし、上智大学の存在は全国区とは言い難く、超全国区の早慶と比べると大きな差があるのは否めません。上智だからどれくらいのレベルなのかとピンと来ない人もいるため、就職後のことを考えると早慶の方がいい場面も出てくるでしょう。
ICUは教養学部1つのみでその偏差値は65.0です。早慶と比べると5ポイントほど差をつけられており、一定の差が存在することが言えるでしょう。教養学部1つしかないため、大きく変化のしようがないため、今後も同じような差がついていくはずです。
偏差値だけを見れば断然早慶ですが、英語を学びたい人からするとICUの方が英語を勉強してきた人としてのいいイメージを持たれる可能性があります。学問に真摯に取り組みたい場合、ICUの方が少数精鋭で隅々まで見てもらえるため、大学で学問に専念したい人はICUという選択肢も捨てがたいでしょう。
実は偏差値だけを見ると東大は偏差値67.5が多く、理科三類のみ72.5と早慶と差がありません。しかし、この数字は二次試験の偏差値で、実際は共通テスト5教科すべて受けて、平均得点率9割ほどを確保しないといけません。早慶は3教科でいいところ、東大はその倍以上試験を受けて9割の得点率が必要です。全てを得意科目にするか、満点を複数の教科で狙わないといけないため、偏差値では計り知れないレベル差が存在します。
旧帝大に関しては2浪、3浪でも入学する価値はあるとされ、早慶とはハードルが異なります。就職面で早慶を唯一上回るのは国立大学、しかも旧帝大。真剣に臨む覚悟があるのであれば旧帝大を目指し、根気強く挑むのがいいかもしれません。
早慶の就職状況はどのようなことになっているのか、詳しく解説します。
結論から申し上げますと、早慶は就職に超強い事が言えます。多くの学生が苦しむ学歴フィルターに早慶はほとんどかかりません。また早慶出身の会社経営者や官僚が数多くおり、学閥を形成する企業も少なくなく、早慶というだけでそれなりの目で見てもらえる可能性があります。地方都市でも早慶の知名度は絶大。このことを考えると就職に強いのは当然と言えるでしょう。
人気の会社はどの大学の学生を採用したいのか。その結果が紹介されており、全業種で人気を集めたのが早慶でした。大学によっては特定の業種で強いケースはあっても、すべての業種で強かったのは早慶で、コロナ禍の緊急時では余計に早慶で手堅くまとめていく大企業が多いことがわかります。東大や京大すらも凌駕する早慶のパワーは絶大のようです。(参照:AERA)
有名企業への就職率も私立で圧倒しているのは早慶と言いたいところですが、私立1位が慶應義塾なのに対し、早稲田は私立4位。早慶で圧倒とまでは言えず、豊田工業大学や東京理科大学といった理工系大学に後れをとった状況です。理工系大学の強さは国公立でも当てはまります。早稲田でも理工系学部に力を入れますが、まだまだこれからといったところのようです。(参照:大学通信オンライン)
早慶の壁は厚くて高く、そう簡単に他の私大が乗り越えられるものではありません。それだけ知名度が絶大で、100年以上早慶という言葉を聞き、大学野球やラグビーの早慶戦は生中継で放送されるぐらい。たとえ偏差値で肉薄しても知名度的に知られていないため、超えることは困難です。だからこそ、早慶は素晴らしいブランドなのですが、あとは入ってどのように活用できるかどうか。すべては本人次第です。